ヤマハ技術ポスター展

9月4日、浜松のヤマハ株式会社本社でのヤマハ技術ポスター展にて、静岡大学ピアノとウェルビーイング研究所として出展を行いました。

ヤマハ技術ポスター展 ポスター展 後藤友香理先生のパネル

ヤマハ技術ポスター展 後藤友香理先生のパネル

ポスター展というのは、理系の方にはお馴染みかも知れませんが、研究内容をパネルにて提示し、展示を見に来た方からの質問に答えたり、意見交換したりする、というものです。ヤマハ株式会社と静岡大学の間で連携の協定が結ばれた関係で、この日は、静岡大学所属の研究者が計14件のパネル発表を行い、ヤマハの社員の方々がパネルをご覧になりました。所長として私は「静岡大学ピアノとウェルビーイング研究所」のパネルの前に立ちました。教育学部の後藤友香理先生の「クラシック音楽における演奏解釈の形成と伝承」のパネルの隣でした。

出展者の中から6名がミニレクチャーを行い、私も、最後の時間帯に発表させていただきました。ヤマハ株式会社の方々から、本研究所を立ち上げる段階で、アドバイスを賜り、アーカイブ室の利用についてもご提案くださっており、我々の研究との連携を深めていきたいと考えております。ヤマハ株式会社は、1897年設立の日本楽器製造株式会社の時代から数えて125年以上にわたりピアノとウェルビーイングについての事業を展開されてきた企業ですから、我々としては、巨人の肩に乗るような、そんな思いなのです。

今回のピアノとウェルビーイング研究所出展は、研究そのものの紹介、というより「研究所」の紹介、といった形になりましたが、多くの社員に興味を持っていただけたようで、手応えを覚えました。社員の方々とは、名刺交換をするのですが、手持ちの名刺は十数枚で、途中で切れてしまいました。20枚は用意しておきたかったところです。

社員の方々とお話ししてみますと、それぞれの持ち場で工夫を重ねられ、創造性にあふれていらっしゃるのが伝わってきます。こちらの出展をご覧になる際に、ピアノの波動を精細な映像で映し出すタブレットを手にご自身の成果を紹介してくださった方もいらっしゃり、なるほど、ポスター展は見学するだけだけでなく社員の方が成果の一端を示す場ともすることができるのだ、と膝を打ちました。プロの矜持を見る思いでした。名刺に博士の称号が記されている方もいらっしゃったので、テーマについてお聞きしたところ、バイオリンを肩と頷の間に挟む際の圧力について実証研究されたとのこと。ご自身もバイオリンを嗜まれるそうですが、楽器の練習に励む中で身体的な不調を抱える方がいらっしゃるのを残念に思い、それが博士論文のテーマの着想に結びついたとのことでした。また、会社の仕事とは別だけれども、と前置きして、アカエゾマツの活用とピアノを結びつける浜松でのイベントをご紹介くださった社員もいらっしゃいました。ソムリエやアロマテラビーの資格も記した会社とは別の名刺もお持ちでした。

社員それぞれの方の服装や髪型、それにお髭の様子などからも(笑)、自由な社風を感じました。ヤマハの中田卓也社長は、若い頃はよく遅刻もしていました、と意外なことを語っておられますが、創造のエネルギー、ブレークスルーを大切にする会社ならではの社長エピソードだと感じます。創業者の山葉寅楠も、子供の頃は、神社の鳥居を焼いてしまったほどのヤンチャな子供であったそうですが、型通りの真面目さ勤勉さとは違った明るいエネルギーに満ちた会社であるとの印象を受けました。

開放的なヤマハの社屋

開放的なヤマハの社屋

当初、ポスター展の意義が今ひとつわからないままに出展したのでしたが、多くの社員の方と知り合い、社風も感じ取ることができ、私個人としては、大変実りの多いものとなりました。ピアノ製造の現場から得たものを、研究所として生かしていきたいと思いを新たにしました。

このポスター展の後、浜松総合庁舎ロビーで行われている「ヨキカグ×静岡大学」の展示を見学してきました。

「ヨキカグ×静岡大学」の展示

「ヨキカグ×静岡大学」の展示

これは、ピアノとウェルビーイング研究所メンバーでもある横田宏樹先生が主宰されているイベントです。経済学を専門としておられる横田宏樹先生は、「静岡県の身近な木を使って木に関わる全ての人を幸せにしていこう」というコンセプトを共通認識として、木に関わる様々な人達で集まり、新しい家具づくりに取り組むプロジェクトを推進されています。これまであまり家具の材料としては活用されてこなかった様々な樹種で作成された椅子などが展示されていました。木には独特の温もりがあり、森の成長と私たちの暮らしをつなぐ回路が見えてきます。ピアノも木材から成っていますから、ピアノと森は切り離せません。「ヨキカグ」プロジェクトとピアノとウェルビーイング研究所のコラボレーションも視野に入ってきそうです。

帰りの浜松駅では、ヤマハとカワイの展示をひとしきり楽しんでから、新幹線に乗りました。良い1日でした。